賃貸マンションでの家賃滞納者への対応策、「強制執行」の経験談|函館の不動産会社ファインエステート
かつて当社で受け持っていた賃貸マンションでの「強制執行」の経験談をお話ししたいと思います。
当時、長期の家賃滞納者への対応に疲れ果てていたオーナーさんから管理の移行を受けた時期でした。
対象の人物は、まさに「強者」。管理受託当初から対応は開始しておりましたが、まさに「糠に釘」の均衡状態が1年続いたのです。
「強制執行」という最後の砦ともいうべき法的措置に至ってしまったわけですが、このケースでは長期にわたる滞納賃料や諸費用請求などの債権のほとんどを回収できました。
これは非常に稀なケースと聞きます。
悪質滞納者の場合、当然ですが当の借主に債務履行を果たす経済力はありません。連帯保証人についても同等の財力である場合が多く、放棄されてしまうことの方が多いのです。
悪質滞納者の「モデルケース」のような人物像
強制執行当日、当然の如くお部屋に本人はいませんでした。
惨憺たる状況の荒れた室内には、わずかな残置物。おそらくゴミとして置いて行った程度の物ばかりで、差し押さえの対象になるようなものは皆無。
事前通知を受け、早々に夜逃げしたのでした。
こういったタイプの入居者には特徴があります。それは「複数のトラブルを同時に引き起こす」確率が非常に高いというところ。
ペットの無断飼育、近隣への騒音問題、バルコニーへ大量のゴミの放置、ゴミステーションへの回収不能ゴミの投棄…、この入居者も同時に複数の問題の原因となっていました。やはり再三の是正要求にも応じませんでした。
連帯保証人と貸主に大きな負担だけを置き土産に、残された虚しい空間。
予想していたとはいえ、頭に血がのぼったのを覚えています。
家賃滞納や夜逃げ、開き直りへの要はただひとつ。「あきらめないこと」です。
賃料債権や修繕請求、代理人費用などを残し、本人は雲隠れ。
連帯保証人に関して言えばさらに上手で、支払いの意思があるように見せながらのらりくらりと話をかわす状態。
社長先導のもと、全社挙げてあらゆる手を尽くしました。
連帯保証人の自宅は遠方であったため、まさか虚を突いて訪問するなどとは思ってもいなかったでしょう。訪問時、自宅玄関先で動揺する様子がうかがえたのを記憶しています。
まるで探偵業のような地道な追跡で退去者の転居先も突き止め、それを連帯保証人へ報告しました。ここでも先方に焦りが感じられました。それは、退去者をかばい続けるつもりだったということのあらわれです。
あくまでも事務的に、かつ穏やかに対応を続けました。
これら当方の動きと、決してあきらめる様子のない態度に、ついには連帯保証人も疲れたのか、総額84万円もの請求金額を一括にて弁済してきました。
生産性の無い債権回収。自己防衛としての「入居審査」からしっかり予防線を張る必要があります。
これらは業務上の責任の範囲内と理解し対応し、今回のように債権回収がうまくいった場合に得られる対価は「実績」と「経験値」、「達成感」。
それももちろん非常に大事で貴重なことではありますが、解決に要した「手間」や「時間」、「人件費」や「心的苦労」と比較すれば圧倒的に後者側の方が高くつくのです。
さて、ではこのようなケースに遭遇する確率をゼロまで近づけるには、一体どうすればよいのでしょう?
やはり、「事前入居審査」というのは重要になってくるわけです。
当社では入居審査の際に注意すべき点を、ケーススタディに基づいて日々更新していっており、このような部分を特に気をつけています。
①借主・連帯保証人の収入が賃料支払いと比較し、バランスが取れているか。
一般的に賃貸物件の賃料は、月収の4分の1以下が適切とされています。
連帯保証人の月収についても同様の基準が適切です。
月収の4分の1を上回る賃料になると、それだけ滞納リスクは高まります。
②お会いした際の人柄や印象はどうだったか。
あるいは案内をした担当者からお聞きした印象はどうだったか。
アナログですが、第一印象や会話の内容は大きなヒントになります。
③申込書・添付書類に矛盾する部分がないか。また、空欄・不明点が多くないか。
細かく確認しましょう。
空欄は「書くことが無い」訳ではなく「書きたくない」という場合もあります。
「書きたくない」部分は、審査に影響を及ぼすような内容のことが多いです。
⑤質問は遠慮せずお尋ねする。その際に矛盾点やはっきり言わない部分がないか。
⑥特に納得できる理由なく入居を急いでいないか。
スケジュールを急かすのは、何か目的があるかも知れません。
不利な部分に気付かれないうちに契約を結んでしまいたい、ということもあります。
性善説に立って考えたいところですが、それは言葉を変えると「相手への不要な譲歩」であるケースも考えられるのです。
入居審査の時は仲介業者さん任せにせず、ご自身でもしっかり見極めるようにおすすめします。
始めからシビアになるのは骨の折れることですが、それがあってこそ、その後の入居者さんとの良好な関係性が維持できるプロセスに進めるのです。
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